絵のマニュアルについて考える


土佐光起

江戸時代の土佐派の絵師さんです。
宮廷の絵所を復活し、絵所預りとして活躍した土佐派を代表する大和絵の絵師としてだけでなく、ライバルの狩野派や宋元画を学び、それまで土佐派が描かなかった風俗画や草木図などの題材を取り上げ、清新な画風を作り出したひとです。
温雅な大和絵に克明な写生描法を取り入れ、江戸時代の土佐派様式を確立した、すんごい人です。

土佐光起/「源氏物語画帖」より『若紫』

1690年(元禄3年)(死去する前年)に、「本朝画法大伝」という技法書を書きました。内容は、画の六法・三品・十二忌などの説明や、様々な技法、筆や顔料の事など実践的な記述がされていて、土佐派の画法を体系化して書き残しています。

それまで口伝であった、門外不出とされる土佐家伝来の秘伝を、誤って伝えられるのを恐れてマニュアルとして残そうとしたのです。
(ちなみに狩野派のマニュアルは『画道要訣』)

現代の日本画家がこの書物を読んでも、描き方や材料に関してはほとんど今と変わらないのだそうです。

しかし、絵画において流派というものがなくなった今では、絵を描く者達はそれぞれオリジナルの技法を模索していかなければなりません。
自分だけのマニュアル。。いつか出来るようになるんでしょうか。。
ため息です。
土佐光起/菊の百花画より

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